【素材研究室①-1】GORE-TEXの話 ~結局GOREって何なんだい?~
2018/11/20 21:01
さて、今回から【素材研究室】と題しまして、アウトドアブランドでよく耳にする素材について
少し深堀りしたお話をしてみようかと思います。(←少しの加減が筆者には難しい)
第1回目は防水透湿素材の代表《GORE-TEX》についてです。
このタグはご存知の方も多いのでは無いでしょうか?
…2018年11月。
現在アウトドアブランドから出ている《防水透湿素材》の数…
はい。多すぎて分かりません(笑)
ただ、一番有名なのは間違いなく《GORE-TEX》でしょう。
これは自信持って良いはず…良いですよね? ←何故か自信なさげ。
もちろん、防水であって透湿するのですから、水は入らないけど、湿気(水蒸気)は外に出す素材で御座います。
世界で初めて作られた防水透湿素材がこのGORE-TEXでした。
そんなGORE-TEXの知っていること、思わずへぇ~となるようなこと(書いてる本人が一番へぇ~連発でしたけどね)等、色々とズラズラととり止めも無く書いていきます。
是非、お時間がある方は最後までお付き合いくださいませ。
それでは本題に入りましょう。
今回は3部構成にしてみました。
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1.GOREを構成する素材に関して
2.透湿性に関して
3.GORE-TEXプロダクトに関して
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*本日は《1.GOREを構成する素材に関して》です。
2.3に関しては別途更新致します。
全部入れたら流石に長編大作に成り過ぎました…。
1.GOREを構成する素材に関して
そもそもGORE-TEXって何?というお話。
A. GORE-TEXメンブレン(生地)=ePTFE+親水性ポリウレタンポリマー
GORE-TEXメンブレン自体が只の1枚で無く、複合素材になっております。
まず、重要なのがこの【ePTFE】という素材。
実は、沢山出ている防水透湿素材の区分で一番大きい区分がこの【ePTFE】を使うかどうかになります。
使っている区分はGOREやeVENTが有名でマウンテンハードウェアのDRY.Q ELITEなども属します。
反対に使っていない区分にはポーラテックのNeoshell(実はまだ不明な点が多い)やファイントラックのエバーブレス等が属し、PU(ポリウレタン)系防水透湿素材と言われます。
PU系も疎水性多孔質や親水性無孔質とまた区分が分かれます。
PU系の話はまた別の機会を設けます…全てやったらかなり長くなります。
(すでにかなり長くなるって言っちゃてるのですが…)
では、【ePTFE】は何なのか?
【expanded polytetrafluoroethylene】の略です。←それが知りたいのでは無い…
直訳すると『広げた(延伸した)ポリテトラフルオロエチレン』ということです。←うん、それで?
その原料となるのは【蛍石】という鉱石でして、それをですね…はい…なんやかんやありまして←(ここはかなり難しい話)
粘土状にしたのがPTFEという素材。それをexpandedしたのが【ePTFE】で御座います。
このPTFE自体がフッ素と炭素のみで構成されており、摩擦係数の最も小さい物質とされています。
それをシート状に加工した【ePTFE】は高い疎水性を持っています。
疎水性とは『水と馴染まない性質』という意味で反対語は親水性です。
水と油が混ざらないのが疎水性です。
撥水とは水滴が物質上で球体となり転がる状態を指すことが多く、
疎水性と認識が似ていますが、疎水性の枠の中に撥水性がいると思っていただければ…。
基本は疎水性=撥水性の認識で大丈夫かと思います。
この【ePTFE】を商品化したのが、いわゆるテフロンなのです。
簡単な話はテフロンのシートを使っているということです。←早くそう言ってくれればいいのに。
テフロンというのは「あの」テフロンです。
フライパンとかに使われていて、焦げ付きにくくする「あれ」です。
セラミックとは違いますので、混同しないように…。
そのテフロンがウェアに使われているわけですから、そりゃ丈夫なわけです。
ちなみにこの【ePTFE】は人工血管にも使われる素材でもあります。
耐久性の高さに加え生態適合性の高さも持ち合わせております。
静脈再建手術などに使われるくらいですからね。薬品にも強く、滅菌も楽とまさに万能。
GORE-TEXウェアを何度か洗濯したらダメになったという話を聞いたことがありますが、
そんなことは有り得ません。洗剤が表地に残ってしまって本来の機能が損なわれることはありますが、
その程度で中の【ePTFE】はダメになるわけないです。
日本ゴア社もGOREウェアはこまめに洗濯して欲しいとしています。
なぜ洗濯しないといけないかは後述…透質性の話に関わります。
GOREメンブレンはそんな万能な便利素材【ePTFE】に親水性PUポリマーが肌側に付いております。
このPUポリマーを付けるのがGOREで付けてないのがeVENT等になります。
なぜつけるかと言うと、皮脂等の汚れ防止の役目になります。
【ePTFE】には沢山の小さな穴が開いており、その穴の大きさは水滴の20,000分の1で
水蒸気の700倍という大きさになっているのですが、PUコーティングを施さないと、
この穴が汚れで詰まってしまうのです。
GOREはコーティングで穴を覆うので、基本的に通気はしません。
ですので、『防風性がある』と言われております。
このコーティングが親水性をもっているから、【透湿】という機能が備わるのです。
詳しくはまた次の章で…。
ということで、GORE-TEXは【ePTFE】の持つ高い疎水性(防水性)・耐久性、
PUポリマーのコーティングにより耐風性(防風性)を兼ね揃えた素材となっております。
これ、PTFEが伸ばせなかったら実現していない素材なので、延伸に成功したボブ・ゴアさんスゴイ。
あっ、ボブ・ゴアさんはゴア社の創業者であるビル・ゴアさんの息子さんです。
実はボブ・ゴアさんもPTFEの延伸には苦戦していたという話がありまして、
棒状に加工したPTFEを温めながら両端から徐々に伸ばす実験を何度も繰り返したのですが、
これが全て失敗。どうやっても破断してしまうのです。
失敗続きで流石にボブさんもイライラ。
とある日の実験も失敗し、
「あ゛ーーーーもう!!!」
↑これはあくまでも想像です。きっとこんな状態だったはず。
とイライラを爆発させて勢いよく引っ張ったら…
伸びたのです。元の10倍の長さまで。
ウソみたいなホントの話。
まさに失敗は成功のもと。
勢いよく引っ張れば伸びることを発見したボブさんはひたすらその素材を研究しました。
そりゃ顕微鏡でも見ます。そしたら蜘蛛の巣状に組織が変形していました。
ぎゅっと引っ張ったら所々破れたのですが、強さも相まって結果的に沢山の小さな穴が開いた素材が出来上がったのです。
その小さな穴が水蒸気を通す穴となっているのです。
この発見は1969年の話。
それをアウトドアウェアに出来たのが1976~1977年の話になります。
PTFE自体はその絶縁性の高さからケーブル等に使われていたのが主でしたから、
ウェアに採用するという発想が有りませんでした。
シート状に加工出来て初めて「服を作ったらどうだろう?」となったのです。
今となっては登山靴に使われる防水素材の定番となっているGORE-TEXですが、
靴に関してはダナーが世界で初めてGOREファブリックの採用に成功しました。
そして世に送り出されたのが『ダナーライト』だったのです。
私も10年近くですが愛用してしております(^^)
GORE-TEXってすごい素材ですね。防水透湿の雨具から絶縁ケーブル、人工血管にまで使われてる…。
医療機器・電子機器・高分子加工など、様々な分野で2000件以上の特許を取得していますから、もう世界中から絶大な信頼を得ています。
2017年のノーベル物理学賞を受賞した重力波の発見にもGOREのケーブルが使われていました。
こういう成功にも関わっていたのは知らなかった…。
…。
…。
…もう素材についてはこのくらいでいいかな?
まだ【透湿性に関して】と【GORE-TEX プロダクトに関して】があるし、
もっと詳しく知りたい方は日本ゴア社のHPをご覧下さい。←下線部をクリックで日本ゴア社HPへ移行します。
さて、次回はGORE-TEXの透湿性に関してのお話です。
各社透湿性に関しては色々な数字を出していますが、結局どうなの?
みたいな話になるかと…。
はい…やはり長くなりましたね。
最後までお付き合い有難う御座いましたm(__)m
それでは、また~(^^)/
-MN-
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