【現場レポ】 冬季深夜登山 ~奥多摩駅からの雲取山~
2015/3/1 11:23
注:長いので時間があるときにでも読んでください。(笑)
今年も予定通り2月に行いました深夜登山!
事の発端は「日帰り登山を追及するとどこまでやれるのか?」という問いでした。
今回は2/26を丸1日使って歩き倒すという予定で、
出発は午前0時!
ちなみに私は当日通常勤務でしたので、終電1本前で奥多摩駅に向かいました。
ここから寝ずに歩き始めます。もちろん山行中に仮眠の予定は組みません。ただひたすら歩きます。
簡単な行定表は、
登りルート 奥多摩駅~六ツ石山~水根山~鷹ノ巣山~七ツ石山~雲取山
下りルート 雲取山~鴨沢(バス停)
地図に記載されている時間通りに進むと登りが約10時間、下りが約4時間と合計14時間はかかりそうな行程でございます。
これを休憩込みで同日午後3時には下山したいという予定でスタートです。
ハイ~歩き出してすぐガスって何も見えない~…。
夜間+ガス=視界ほぼ0…。←大げさ、5mはあった(笑)
左の写真、中央にうっすら写っているのが今回のお供T.Tくんです。
右の写真は月ではありません。彼が振り返っただけです。
ちなみにこれはボクが10秒立ち止まって撮ったものです。
こちらがライトを消すと、相手がライトで照らしても全く見えません。
こちらも何か光ってるくらいにしか見えない状態です。これが夜明けまで続きます…。
警戒すべきは『道迷い』これが最大の敵ですね。細いルートはいいですが、少し開けると分岐が全くわかりません。
地図を確認しながら、横に広がってお互い両端に意識を向けながら歩きます。
こういった自然が作る氷の造形は美しいですね~。
右の写真は幅5mmくらいの木に5cmくらいの氷が付いてます。これは1mm幅の草でも同じ現象が起こります。
透けるくらいの氷の膜によって作られる草の塊は花が咲いているようにも見えます。
途中から凍結が厳しくなってきたので、軽アイゼン装着。
イエーイ六ツ石山…。テンション高めに記念撮影。
しかし、2人はまだ気づいていなかった!
自分たちの犯した間違いに…。
この石尾根というルートから鷹ノ巣山方面に最短距離で行こうとすると、この六ツ石山の山頂は踏まないんです。
そうです…ルートを間違えてることに気づいていないんです。
このまま山頂から道なりに歩き出してしまい、間違いに気づくまで約40分…。
引き返します…なんかおかしいと思って立ち止まったり、なんだかんだで計1時間半のロス…。
完全に山頂手前の分岐を見失っていました。あれだけ分岐見逃さないようにって言って歩いたのに!
まんまとやられて二人に一気に疲労感が襲ってきます。
下山時間にも影響するので、もう間違いは許されません!非常に慎重に歩を進めます。
次第に明るくなってきました。明るいってすばらしい!!!
ホントは七ツ石山あたりで夜明けのつもりだったのにな…。
表面がかるく凍ってるので足の置き場を気にして歩くとそんなに深くはまりません。
ズボっといってもひざ下くらいの深さです。
しかしゲイターを付けていないので、踏み抜くと靴の中に雪様が飛び込んできます。
私(MN) 「あ~もうやだ~雪入ったし~ちょっと~靴の中冷たい~…」
ハイ。登山あるあるの一つ『疲労によるオネエ化現象』が始まってきました。普段オネエっぽく無い人が突然オネエ言葉になったら、非常に疲れていると察してあげてください。
ぶわ~着いた…鷹ノ巣山。ルートしくじったのが響いております。水根山は山頂に何も無かったのでそのままスルー。
深夜登山はこの明るくなってきたあたりが一番きついですね。夜遊んでるという変なハイテンションが切れかかっております。
とりあえず、休憩ポイントの鷹ノ巣山避難小屋を目指します。
この避難小屋は辺りも開けてて、中の設備もそこそこ整ってるので非常にオススメです。
もちろんトイレもあります。積雪期以外はけっこう人が集まる避難小屋です。
冬もここを目的地にして1泊ハイクで仲間内で宴会も楽しいです。タイミングよければというかほぼ貸切状態になりますからね。
ただし、他の人がいたらほどほどにして寝ましょう(笑)
ボクのオススメはここと、埼玉県境の長沢背稜にある一杯水避難小屋です。天目山直下にあるやつですね。
同じ長沢背稜にある酉谷の避難小屋も人が少ないので貸切率高いです。一杯水は天目山からのご来光目当てに大晦日は賑わうらしいです。
冬季の避難小屋はこんな東京と埼玉の境でも0度から-10度くらいになるので、装備はしっかり持ってってください。
話が逸れましたが…。ハイ。少し暖かいものを飲んでまた歩き出します。
出発前にゲイターをして装備を整えていざ次の目的地である七ツ石山へ。
鷹ノ巣~七ツ石山間は尾根道と迂回ルートがありますが、迂回ルートは下山道にも繋がっているので、迷わないように尾根道を歩きます。
尾根道にも分岐や迂回ルートとの合流点等があり目印にはなります。ルートも細く積雪もあるので滑れば尾根から落ちます。少し緊張感のでるルートです。
そんなところを歩いてるとき。
T.T.くん 「MNさん…分岐出てこないですね。雲取の山頂行って下山間に合いますかね?ギリギリな気がしてきました。」
私(MN) 「分岐?もうとっくに過ぎたけど?」
T.T.くん 「えっ?じゃあ次の七ツ石小屋への分岐は?」
私(MN) 「それも過ぎたけど?山頂はもうすぐのはずじゃない?」
T.T.くん 「マジですか!?全く気がつかなかった!やばいですね、完全に意識とんでました…。」
私(MN) 「それ大丈夫かよ~」
ハイ。登山あるあるの一つ『疲れすぎて意識とびとびになっちゃう症候群』ですね。寝てないので余計に発症リスクが高くなっております。
皆さんも注意力が散漫になると道迷いや怪我のリスクが高くなるので気を付けましょう。
着きました…七ツ石山です…。もう寄り添うことしか出来ません…。
まあでもここまで来れば、後は地図いらないくらい歩きなれた道なので、気合入れて雲取へ向かいます!!!
こいつは奥多摩山域で1番有名な木でしょう!!!このひねり具合!氷を纏ってる姿もいいですね。
さぁ!この後は小雲取山前の急登!そうですね、この急登はかなりきついと有名です。それを登ってる最中にT.Tくんが…。
T.T.くん 「これやべぇ!いったい何キロカロリー使わせる気だ?(笑)」
T.T.くん 「これだ!オレが求めていたのはこれだ!そうだ!もっと来い!まだだ!もっとだ!(笑)」
そんな一人言。ハイ。登山あるあるのひとつ『トレッカーズハイ』ってやつですね。尋常じゃない疲労感と溜まる乳酸は笑えてきます。
降雪と風の影響で体感温度はかるく-10度を下回っていたでしょう。
それを越え、最後の雲取山直下の急登に取り掛かりまして…。
何とか…目的の雲取山頂…。ここまで11時間15分かかっております。
山頂の避難小屋で昼飯です。山頂に誰も居なかったので、まずは小屋に入って叫びます。
「あー!!!」とか「だー!!!」とかです。意識をはっきりさせるのと心と身体を奮い立たせます。
下山の体力を確保する為に一気に食事をとります。「食べろ」「動け身体」「帰るぞ」そんなことをぶつぶつ言いながらの食事です。
T.Tくんが祈っております。←さっき小屋の中で5分間意識とばしてました。
「15:53のバスの乗れますように!」
すでに時刻は12時。開始から12時間経っております。
下りは通常のペースで4時間ほどだということを考えると全く余裕は無いですね!
下りは私が先頭を歩きます!この歩きなれた下山道は設定タイムを大幅に短縮しながら下山できます!
というか、集中力が切れないうちにこの山行を終えたい!自分自身のリミットが迫ってきている実感がここ一番の力を出させてくれます。
さっき摂った食事がエネルギーとなってまともに力を発揮できるのは3時間くらいだろう
………やれる!!!
上の写真のように、林道に入ると風も無く、穏やかな雪山ハイキングといった感じです。鹿様にも会えました。
T.Tくんも少し回復したようです。
しかし、七ツ石小屋を過ぎたあたりから雪が雨に変わりまして…。今回の山は機嫌が悪いようで…。
雪が無くなったので軽アイゼン外します。
もう雨になってしまえば、1秒でも早く下山したい!そんな勢いは休憩無しという形として表れ、ぐちゃぐちゃの足元を気にしながら一気に下山します。
ハイ!!!3時間で下山できました!色々ありましたが、当初目標の15時下山はほぼクリアといったところでしょう…。
15時間歩いてやりましたよ!
登山口の標識に抱きつくT.Tくんの目!もう雨に濡れた子犬のようですね!誰か拾ってやってください。
バス停まで戻ってC.C.レモンで乾杯です。染み渡る!持ってきたウイスキーで割ってレモンハイボールにしても美味しかったです。
残りはバスが来るまでお湯割り。 泥まみれの色々を洗ったりしながらバスを待ちました。
バス停ににゃんこが居まして~水溜りで喉を潤してました。しかも触っても逃げない!イヤサレタ~イヤサレタ~!!!
ここで下山したT.Tくんの名言が飛び出しました!!!
T.Tくん 「はぁ~もうバターになりたい!!!!!!」
ハイ~!バターになりたいをいただきましたね!説明いりますかね?これ!
つまりは、もう溶けて無くなりたいくらいの疲労感ということです。彼の希望は布団に包まれて溶けてしまいたいとの事。
マーガリンじゃないところが肉食系といったところでしょうか(?)
この後、奥多摩駅に戻り、T.Tくんはカツ丼の大盛り、ボクは親子丼の大盛りを食べでお風呂に入って帰りました…。
翌日は仕事ですが?何か?当然です!あくまでも日帰り登山です。お休みは1日しかありませんから!
いや~今回の山行も詰め込んだな~。
T.Tくんは「これやろうって言ったの誰だ!」とか「正気の沙汰じゃない」とか「もう二度とやらない」とかまあ色々言ってましたが、
自分の気力・体力が空っぽになったことに非常に満足していたようです(笑)
でもやっぱ1年に1回くらいがちょうどいいや…。
最後に、今回の山行は夜間歩行訓練を兼ねたものになります。
夜歩くことはかなりの危険を伴うので、あまりオススメはしません。
もし行うのであれば一緒に行く人の力量を把握した上で、知っている山域・ルートであること、最悪ビバークできる道具があるか等細心の注意を払ってください。
基本的には明るくなったら歩き始めて、暗くなる前には1日の行程を終了しましょう。
1日の行動時間は長くても10時間以内にしましょうね!
長文失礼しました!それではまた!
-MN-