【ジビエの話】熊の手を食し、世界の食肉問題に思いを馳せる。そんな梅雨の合間。
2019/7/5 14:50
雨ですね…。
梅雨か…。
沢は増水するから危ないし。
登山も計画を改めさせられたり…。
ぱっとしない季節ですよね。
秀山荘は【夏山祭】というセール中で御座いますので、
直近の登山計画が変更になった際は【是非とも】お立ち寄りください。
(宣伝はこのくらいにして…)
今回はタイトル通り、熊の手を食べることとジビエに関してのお話で御座います。
事の発端は、以前facebookで紹介した《2019夏 渓流》
この雑誌に掲載されていたジビエに関する記事でございます。
熊・猪・鹿といった農作物を荒らす、
もしくは人的被害を被る可能性がある動物を捕獲・駆除等の問題。
そして世界の食肉事情に関しての記述…。
みなさんはジビエ料理を食べたことがありますか?
そもそも【ジビエ】とはどういう意味か?
《ジビエ=古くからヨーロッパで嗜まれてきた狩猟で得た野生の鳥獣を調理する食文化》
昔はこうしたジビエ料理が地産地消のようなもので、都内で専門店が出来始めたのはごく最近の話なのです。
日本でジビエ料理が広がってきた背景には、野生の鹿や猪の数が増えすぎてしまい、
上記したような被害が広がってしまったことが関係しております。
そして2015年~2017年頃から積極的に捕獲・狩猟し、頭数を管理するということや、
流通に対するガイドラインの見直し等もあり、昨今のジビエブームとなったわけで御座います。
そもそも、なぜそんなに流通しなかったのか?
それは、【ジビエ肉の安全性】の問題。
そりゃ野生の獣ですから、マダニも付いてますし、寄生虫もいますし、
色々な病原体を保持している可能性もあります。
ここが家畜と決定的に違うのです。
野生の鹿や猪の健康・衛生面を固体レベルで管理する…。
無理だ…。
それでも安全に食べてやりたい。
その命を無駄にしたくない。
調理する側が出来ることは
「しっかり火を通してから食べる」と言うこと。
肉を食べる時の基本ですね!
では本題に入りましょう!!!
これはガイドの森さんが猟師さんからもらったものです。
冷凍されております。森の熊さんです。
冷蔵庫で自然解凍します。
「手」と言ったけど、調理しながら後ろ足かな~とか思いました。
実際はどちらか分かりません…。
一緒に猪の肉塊も頂きましたので、調理していきます~。
まずは猪の肉から。
これは筋膜に沿って包丁を入れながら食べやすい大きさにしていきます。
筋膜も取ったほうが食べやすいかと思ったので、出来る限り除去します。
途中で脂肪の中から白い10cmくらいの寄生虫(?)のようなものも出てきたので除去!
(長いアニサキスのようなものと思って頂ければ)
その後は、血抜きします~塩水でばしゃばしゃ洗います。
結構血が出るので、数回繰り返します。
血=臭い
となるので、ちゃんと洗いましょう。
猪の下処理はそんな感じです。
問題はこの熊さんですね。
色々調べましたが、この毛をどうにかしなくてはいけません…。
解凍後はまず、洗います。
(手順にきっちり写真を入れると気分を害する方もいるかもしれませんのでしばらく文章にて手順を紹介します。)
これはハンドソープでわしわしと洗います。
毛の長いたわし…この剛毛っぷり…。
狩猟後に解体されただけなので、普通に泥や色々な汚れが落ちてきます。
次に茹でて表皮に火を通します。
アクは出ますね。
生姜の切れっ端を一緒に入れると臭いを抑えられます。
この時、結構臭いという話を聞いていたのですが、そうでも無かったです。
はい。10分ほど茹でました。
さて、ここからが下処理の本番です。
この剛毛を抜いていきます。
毛抜きという生易しい道具じゃ全く歯が立たないので、
ペンチを使いブチブチ言わせながらひたすら抜きます。
「これはやばい作業だ…」 ←ここから独り言が増えていきます。
「かってーなー」 ←結構力が必要です。
「何本あんだよ」 ←知りません。
「てかこの剛毛の下に残ってるウブな毛はどうするんだろ?」 ←出来れば抜いたほうが…。
右手の握力が無くなったあたりで終了。
つるつるになるまで抜いている人のブログを拝見しましたが、
私はここで心がポッキリ。
うぶ毛は焼いてお仕舞いにしようと決めました。(←これがダメでした)
後にペンチの間からマダニが…。
毛と一緒に掴んで潰したようです。
さっとうぶ毛を焼き、後は食べやすいように指ごとにばらしていきます。
どこまで包丁が入り、どの関節が外せるか?
この作業に関しては、お店にある人体の骨格標本(足)を思い出しながら~。
というか、骨折した時に撮った足のレントゲンを思い出す…。
はい。これで食べやすい大きさになりました。
ここまでくると、見た目は手羽先みたいですね。
せっかくなので爪は残しておきました。
最後に、掌の肉球をとります。(写真は肉球の処理が終わっています。)
見た目はかわいい肉球ですが、いわゆる角質なので、食べにくいです。
断面で見ると、この角質部は色が違うので、削るのはさほど難しくないです。
そして、もう一度、残ったうぶ毛をしっかり焼きます。
後は、先程の猪と一緒に圧力鍋へ。
ワインと野菜達と共に煮込みます。
フォンドボーとかを使うと美味しいらしいのですが、
用意していないので、代用として、
たまねぎ・にんじん・白ワイン・バターをレンジで加熱後、
ミキサーに掛けて似たようなベースを作り投入。
圧力後にカットトマト(パックのやつ)をどぼどぼ入れてひと煮立ち~♪
完成しました。
熊の手(足かな?)と猪のシチューです。(この器には猪入っていない…)
猪は臭みも無く、もはや上等な牛すね肉の食感。
圧力鍋のお陰でホロホロです。
さて、次は熊さん…。
やはりポイントは残した爪ですね!爪を摘んでかぶり付きます。
全体的にゼラチン質なので、すっぽんのような食感。
しかし…
ん?なんかざらつく。
この皮のところ…。
毛根だ。
これがつるつるを諦めた弊害なのか。
こうなるからみんな頑張って抜いていたのか…。
皮自体はプルプルして美味しいのですが、
如何せん、ざらつく。
抜くのが面倒だからと皮ごと削ってしまうのは勿体無い。
しかし…そうか…無駄毛処理か…。
レーザー脱毛所望!
なんて言っている場合でも無く…。
でも、まあ臭いがきついとかそういう問題は無かったので良かった。
次また調理する機会があったらこの毛根問題とどう対峙するかということですね。
表面をしっかりローストすれば気にならなくなるのだろうか?
それともつるつるという正攻法で攻めるべきなのか…。
ん~悩みますね。
やはり情報が少ないのも調理する上での難点。
とまぁ、こうして私は「美味しく食べてあげたい」という気持ちで、
こういった熊や猪と向き合っております。
今回のように寄生虫が出てくる、マダニが付いているといったことが普通な食材であり、
流通に対するガイドラインが見直されたとは言え、まだまだその安全性は確立しているとは言えない状況です。
しかし、食肉に対する問題が、今、世界規模で考えられているのです。
世界中の人が牛・豚・鳥といった家畜をこれからも食べ続けるのであれば、その餌となる穀物も莫大な量が消費されます。
人も穀物を消費し、家畜も消費する。単純に人口の増加なのか異常気象等々により穀物が不足した場合、家畜用の穀物が削減されるのは目に見えます。
牛肉1kgを生産するのに、穀物が11kg必要というデータが出ております。鳥は1kgあたり4kg必要とされています。
家畜用の穀物が削減されたら、間違いなく牛肉の絶対量は減るでしょう。
今でも値段が高いという牛肉がさらに高級な食材となることでしょう。
そしていずれ食卓から肉が消える(?)可能性すら指摘されているのです。
欧米諸国ではすでに、食肉のシェアNo1は鶏肉になっています。
ちなみに、日本は豚肉です。
ダイエット系の情報でも低糖質高タンパクの鶏肉の有用性は示されていますが、
それも絡めて日本でももっと鶏肉のシェアを上げていくべきでしょう。
それでも畜産業の食肉シェアをどうこう言ったところで、根本的な解決にはなりませんね。
そんな世界の食肉問題への解決アプローチとして日本もこのジビエ肉にもっと目を向けていかなければいけません。
冒頭で紹介した《2019夏 渓流》のマタギ考のページ
「ジビエは地球を救えるか?」の一節を引用させて頂きます。(著者は高桑信一氏です。)
『獣害はあっても害獣は存在しない』 (133ページ掲載)
イイ言葉ですね!
みんなただひたすら一生懸命生きようとしているだけなのですから。
こういった動物に対して『駆除』という言葉を使わないで済むように。
猟師さんの高齢化の問題、先にあげた流通問題等、
一般的な「普及」まで時間はかかるとは思いますが…。
釣った魚を自分で捌いて食べる。
熊の手は頑張って毛を抜いてから食べる。(次回はもっと頑張ります。)
正しく調理し、美味しく頂くことが礼儀。
「頂きます。」は目の前の命に対しての感謝。
「ご馳走様でした。」はそれを美味しく食べられるように関わった全ての人への感謝。
消費者として、目の前の命に日々、感謝の意を忘れない。
-MN-
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